再生誘導医薬®の開発ストーリー

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再生誘導医薬® 開発の原点

再生誘導医薬®の開発は、当社創業者である玉井克人(現取締役・チーフサイエンティックオフィサー)が、ある一人の栄養障害型表皮水疱症という難病の患者さんと出会ったことが出発点でした。

表皮水疱症とは、遺伝子異常が原因でわずかな刺激でも表皮が真皮から剥がれるため、生まれた直後から毎日、表皮幹細胞を含む表皮細胞を失い続ける疾患です。

皮膚は表面の表皮、内部の真皮、そして両者を結びつける基底膜から構成され、通常、皮膚は損傷しても基底膜に存在する表皮幹細胞から表皮細胞が供給されるため、自然に修復されます。
栄養障害型表皮水疱症の患者さんは、真皮と基底膜を接着する役割を担う7型コラーゲンというタンパク質を遺伝的に産生できません。
その結果、わずかな刺激で表皮が基底膜ごとはがれ、表皮幹細胞を失ってしまいます。
表皮幹細胞を失うと、表皮の再生はできなくなるはずです。

しかし、玉井は表皮水疱症の患者さんを診察する中で、大量の表皮幹細胞を失っているはずの皮膚が再生能力を維持し続けていることに疑問を抱きました。

この事象を目の当たりにした玉井は、
「骨髄から血液を介して損傷した皮膚へ表皮幹細胞のもとになる幹細胞が供給されているのではないか?」という仮説を立てました。
そして、この幹細胞を骨髄から血液へと動員している生体内物質を見つけて薬にすれば、その薬の投与により血液中の幹細胞を増やすことができるはず。その結果、損傷した組織への幹細胞の供給量は増大するから、からだの再生能力を増強できるのではないかと考えました。

こうした経緯を経て、幹細胞補充メカニズムを解明し、表皮水疱症の治療法を開発するという目標のもと、玉井は再生誘導医薬®の実現に向けた研究に着手しました。

玉井 克人

メカニズムの解明

玉井はこの仮説のもと研究を進め、HMGB1蛋白(細胞の核内に蓄積されているタンパク質)が再生誘導メカニズムの重要な鍵となることを明らかにしました。

  1. 表皮の細胞が壊死する際、大量のHMGB1蛋白が細胞核から血中に放出
  2. 放出されたHMGB1蛋白は血流を介し、骨髄内の外胚葉性間葉系幹細胞を活性化。
  3. 活性化した外胚葉性間葉系幹細胞が血中へ動員され、損傷部位へ集積。
  4. 外胚葉性間葉系幹細胞のもつ組織再生能力により、損傷部位の組織を再生。

このメカニズムの解明が、「HMGB1を医薬品として投与すれば、患者さん自身の体内で、患者さん自身の幹細胞による損傷臓器の再生促進を可能にすることができるのではないか?」という再生誘導医薬®のコンセプトへとつながりました。

研究開発の歩み

HMGB1蛋白を医薬品として投与することによって幹細胞の誘導による損傷組織の再生ができるのではないか
という希望がある一方、HMGB1は自然免疫の活性化を強く誘導し、炎症を引き起こす分子であることも研究で明らかになっていました。

そのため、私たちはHMGB1のどの領域が幹細胞の血中への動員を促進するのかを分析し、その結果、炎症反応を誘導する領域とは全く異なる領域に、幹細胞を活性化して血中に動員する作用をもったドメインがあるということを明らかにしました。

この結果をもとに、HMGB1の炎症を引き起こすドメインを取り除き、HMGB1の幹細胞の再生を誘導する領域のみを化学合成したペプチド「再生誘導医薬®レダセムチド」が開発されました。
これを表皮水疱症モデルのマウスに投与したところ、皮膚の再生能力が飛躍的に向上し、通常3か月以内に死亡するマウスが1年以上生存するという驚くべき成果が得られました。
また、複数の実験の結果、失われていたはずの表皮幹細胞が再生誘導されているということが証明されました。

安全性の高いペプチド医薬の創薬

これらの結果をもって、私たちは再生誘導医薬®レダセムチドを静脈内に投入することによって損傷組織の再生を誘導することが可能であるということを証明し、再生誘導医薬®の実現に向けた大きな一歩を踏み出しました。

研究から実証へ

動物実験結果をもとに、私たちはいよいよ人に対しての薬効実証へと歩みを進めました。
まず、健康な成人男性を対象とした治験を行い、レダセムチドが人に対して安全であることを確認しました。
次に、栄養障害型表皮水疱症を対象とした治験を行い、治験に参加した患者9例のうち、7例の症状が改善し、そのうち4例は著しい症状の改善が見られ、レダセムチドが人に対しても有効であることを確認しました。
また、症状の改善が一時的なものではなく、長期にわたって症状の改善が維持されているかを評価する調査(有効性維持の評価を目的とした調査)において、栄養障害型表皮水疱症に対するレダセムチドの治療効果の持続性も確認されました。

私たちは、レダセムチドが人に対して安全であり、確かな有効性を持ち、持続的な効果を発揮することを、多くの臨床試験とデータの積み重ねを通じて証明することができました。
これにより、再生誘導医薬®が新たな治療の選択肢として医療の現場で貢献できる未来が、より確かなものとなりました 。

未来への展望

再生誘導医薬®は、表皮水疱症のみならず組織損傷を伴う多くの疾患に応用可能と考えています。
現在、表皮水疱症の他に4つの疾患(急性期脳梗塞・虚血性心筋症・変形性膝関節症・慢性肝疾患)を対象にした治験が進行中です。
また、私たちは現在、レダセムチドに続く第二世代の再生誘導医薬®の開発に向けて研究開発を進めております。

再生誘導医薬®は「これまでにない再生医療」という、新たな治療の選択肢として、世界の医療を変革する可能性を秘めています。

難病に苦しむ世界中の患者の皆さまに笑顔をお届けできる未来を目指して、 今後も研究開発に邁進してまいります。